バフェット氏、13才の時に購入していました

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投資史・バリュー投資研究

バフェットとテキサス・パシフィック・ランド(TPL)
―― 少年時代の投資データと売却理由の徹底解剖

「投資の神様」が10代前半で手掛けた銘柄第2号のデータ、ビジネスモデル、そして売却に至った背景

序論:投資の神様が14歳で選んだ「第2の銘柄」

「投資の神様」として世界的に知られるウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏。彼が率いるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオや投資判断は、世界中の投資家から常に注視されています。しかし、バフェット氏の長大な投資キャリアにおいて、彼が10代前半の少年時代に投資していた銘柄については、一部の熱心な歴史探訪者を除いて詳しく知られていません。

バフェット氏が人生で初めて購入した株式は、11歳の時に買ったシティ・サービス(Cities Service)の優先株(1株38ドルで3株購入)として有名ですが、彼がその次に購入した人生第2号の銘柄こそが、今回取り上げるテキサス・パシフィック・ランド・トラスト(Texas Pacific Land Trust / 現 Texas Pacific Land Corporation、ティッカー:TPL)でした。

TPLは、テキサス州の広大な土地を保有し、石油・天然ガスのロイヤリティ(権益収入)や水資源ビジネスを展開する非常にユニークな企業(元トラスト)です。本稿では、バフェット氏がTPLを購入した時期、投資金額、株価推移などの詳細なデータ、TPLの類稀なるビジネスモデルの構造、商流、そして彼がなぜこの銘柄を売却してしまったのかという背景とそこから得られる教訓を、詳しく解説します。

【要約】バフェットとTPLの要点
  • 購入時期・規模:1943年〜1945年頃(当時13〜14歳)。わずか100〜200ドル程度の小規模投資。
  • 企業の本質:土地を保有し、石油採掘権益や水資源利用料を得る「超高収益・資本不要(Capital-Light)」モデル。
  • 売却の理由:少年の資金繰り、より高い投資利回り(格安物件)への資金移動、そしてバリュー投資の過渡期。
  • 最大の教訓:超優良企業(複利の投資先)を早く売りすぎる「早売りの罠」を痛感させる歴史的事実。

1. バフェットによるTPL購入の「詳細データ」

バフェット氏がTPLに投資した時期や規模についての具体的なデータは、彼自身がバークシャー・ハサウェイの株主総会(特に2022年および2023年の年次株主総会)で言及した回顧発言や、彼の伝記的事実から明らかになっています。

購入時期とバフェットの年齢

バフェット氏がTPLの株式(当時は信託受託証券=Trust Certificate)を購入したのは1943年から1945年頃、彼が13歳から15歳(主に14歳前後)の時期でした。第二次世界大戦の最中であり、若きバフェット少年は新聞配達(ワシントン・ポスト紙など)のアルバイトや、ゴルフボールの転売、ピンボールマシンの設置ビジネスなどで自ら資金を稼ぎ出していました。

購入金額と投資規模

当時のバフェット氏の投資規模は、数十ドルから数編の証券を買い集める程度のものでした。当時のTPLの株価(単体)は、名目価格で1株あたり数ドルから十数ドル程度(株式分割調整前)で取引されていました。バフェット氏が投資した総額は、およそ100ドル〜200ドル程度(現在の価値に換算すると数千ドル相当)と推測されています。

TPL投資データ一覧

項目 詳細データ・内容
投資実行時期 1943年 〜 1945年頃(バフェット氏 13歳〜15歳)
当時の取引形態 Texas Pacific Land Trust(信託受託証券)
推定投資金額 約 100ドル 〜 200ドル 前後(自作のアルバイト資金等より)
当時のTPLの評価 鉄道会社破綻に伴い土地処分用に設立された「特殊状況(Special Situation)」銘柄
売却時期 1940年代後半(高校〜大学進学期にかけて順次売却)
現在の株価・時価総額 株価:約 360ドル〜370ドル前後 / 時価総額:約 250億ドル(2026年時点)

2. そもそもテキサス・パシフィック・ランド(TPL)とはどんな会社か?

バフェット氏が10代前半という若さで目をつけたTPLとは、どのような企業だったのでしょうか。その起源とビジネスモデルは、米国の株式市場でも極めて特異な歴史を持っています。

起源:19世紀の鉄道破綻から生まれた「地主トラスト」

TPLの歴史は1888年に遡ります。当時、破綻した「テキサス・アンド・パシフィック鉄道(Texas and Pacific Railway)」の債権者を補償するため、債券と引き換えに同社が保有していたテキサス州の広大な土地(約350万エーカー)が「信託(Trust)」に移管されました。この信託の目的は「土地を少しずつ売却し、得られた資金で信託証券を買い戻して消却し、最終的に清算する」というものでした。

石油の発見と最高峰の「ロイヤリティ・ビジネス」

ところが、売却しきれずに残っていたテキサス州西部のパーミアン・バシ(Permian Basin)と呼ばれる地域の土地から、広大な石油および天然ガスが発見されます。

TPL自体は石油の採掘工事(リグの設営や掘削のリスク負担)を一切行いません。石油会社(シェブロンやコンチョ・リソースなど)に土地を貸し出し、掘削された石油の売上から一定割合を「ロイヤリティ(権益収入)」として受け取るだけのビジネスモデルを構築しました。

このビジネスには以下のような圧倒的な強みがあります:

  • 追加の設備投資(CapEx)がほぼゼロ:石油採掘の莫大なコストやインフレリスクはすべて採掘業者が負担。
  • 極めて高い粗利益率・営業利益率:売上高の大部分がそのまま純利益およびフリーキャッシュフロー(FCF)となる。
  • 自社株買いと消却の連続:得られた現金で発行済み株式をひたすら買戻し・消却し続けたため、1株あたりの価値が長年で爆発的に増大。

3. なぜバフェットはTPLを売却してしまったのか?

TPLは、その後数十年にわたり驚異的なリターンを叩き出し、株式市場の歴史上でもトップクラスのパフォーマンスを誇る超優良銘柄となりました。現在バークシャー・ハサウェイはこの銘柄を保有していません。バフェット氏はなぜTPLを手放してしまったのでしょうか。その理由は大きく分けて3つ存在します。

理由①:学生時代の資金需要と「シガーバット(吸い殻)投資」の時代

第1の理由は、当時のバフェット氏のライフステージと投資手法にあります。10代後半から20代前半のバフェット氏は、ネブラスカ大学やコロンビア大学ビジネススクールへ進学する時期であり、手持ちの資金(運転資金)に限りがありました。

また、当時のバフェット氏は師であるベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)氏の影響を強く受けており、「シガーバット(たばこの吸い殻)投資」と呼ばれる手法を実践していました。これは「見捨てられた割安銘柄を安値で買い、適正価格まで戻ったらすぐに売却して利益を確定し、次の格安銘柄へ乗り換える」というアプローチです。当時の彼にとって、TPLは「永久保有する素晴らしい事業」ではなく、「一時的に異常な安値で放置されている割安な証券」の一つに過ぎませんでした。

理由②:当時のTPLは「清算型の信託」という認識だった

当時の投資家の間では、TPLは「土地を順次処分して資産を配当・清算していく信託」と見なされていました。パーミアン・バシが後に水圧破砕法(シェール革命)などの技術革新によって世界最大級の産油地に変貌し、水資源管理やデータセンター向け用地など莫大なキャッシュを生み出す未来までを、1940年代半ばの14歳のバフェット少年が完全に見通すことは不可能でした。

理由③:より高い安全域(Margin of Safety)を持つ他の格安銘柄へのリバランス

バフェット氏は1940年代後半から1950年代にかけて、ネット・ネット株(正味流動資産を下回る価格で買える株)や、解散価値が株価を大幅に上回る小型清算銘柄に集中投資していました。限定された自己資金を最大効率で増やすため、ある程度上昇したTPLを売却し、より圧倒的な割安放置度(安全域)を持つ別の銘柄へ資金を移動させたのは、当時の彼のアプローチとして極めて合理的でした。

4. バフェットの回顧とTPLから得られる投資の教訓

バフェット氏は2022年や2023年のバークシャー・ハサウェイ株主総会において、TPLをはじめとする過去の投資を振り返り、ユーモアを交えて言及しています。

【株主総会でのエピソード】証明書390号の奇跡と「放置」の強さ

TPLに関する有名な逸話として「390号証券(Certificate 390)」の話があります。1885年の鉄道破綻時、ある株主がTPLの株券を紛失し、マンハッタンの地下室の箱の中に放置されていました。歴史家が1979年にその株券を発見した時、100年近く「売却されずに放置された」ことで、配当と自社株買いが積み重なり、数千ドルの価値だった株券が320万ドル(さらに翌年には570万ドル)という巨額の資産に膨れ上がっていました。

バフェット氏も、素晴らしい事業基盤を持つ企業を「ただじっと保有し続けること(Buy and Hold)」の凄まじい威力を語る際、このTPLの事例を引き合いに出すことがあります。

投資家が得るべき3つの教訓

  1. 資本不要(Capital-Light)ビジネスの強靭さ: 自ら設備投資を行わず、他者の経済活動からロイヤリティを得るビジネスモデルは、インフレ期にも極めて強い耐性を持ちます。
  2. 「素晴らしい企業」を早く売りすぎるリスク: シガーバット投資のように「割安だから買い、戻ったら売る」という手法は短期的には機能しますが、何十年も複利で成長する「真の超優良企業」を途中で売却してしまうと、将来の莫大なリターンを逃すことになります(後にバフェット氏がマンガー氏の影響で「素晴らしい企業を適正価格で買う」手法へ転換した最大の背景でもあります)。
  3. 複利(Compounding)の時間軸: TPLの歴史は、優れた事業構造と自社株買いの組み合わせが、数十年単位でどれほど爆発的な富を生み出すかを証明しています。

結論:少年時代の体験が「現在のバフェット」を作った

ウォーレン・バフェット氏が13〜14歳でTPLを購入し、後に売却したというプロセスは、失敗ではなく彼が「投資家として成長する過程」における重要な1ページでした。

若き日にTPLのような土地・ロイヤリティ型企業に触れた経験は、後に彼がコカ・コーラやアップル、あるいは近年手掛けた日本の大手商社株(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)や西方石油(オキシデンタル・ペトロリアム)といった「強固なキャッシュフローを生み出す資源・権利ビジネス」を評価する上での、確かな原体験になったと言えるでしょう。